行政書士試験 憲法判例解説 第2回 出席停止処分等取消事件 ポイント
令和2年11月25日に地方議会議員の出席停止処分等取消訴訟で判例変更があったよね!
重要な判例変更になるのかな?
判例変更が重要かどうかを自分で判断できるようにならないとダメなんじゃないのかしら・・・?
片っ端から頭に入れていけばいいんだよ!!
しらんけど
こんにちは、ヒグマ館長です。
令和2年11月25日に地方議会議員の出席停止処分取消等請求事件で判例変更がありました(平成20年(行ヒ)第417号出席停止処分取消等請求事件令和2年11月25日大法廷判決)。
この判例変更は結構重要な判例変更となるので、しっかとり押さえておきたいと思い、いち早くとりあげることにしました。
判例解説等は、あまり出ていないので、判旨を中心に見ていきたいと思います。
事件の概要
市議会議員であった被上告人が、市議会から科された23日間の出席停止の懲罰が違憲、違法であるとして、その処分の取り消しと減額された議員報酬の支払いを求めた事件
判旨
出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきものの、裁判所は、常にその適否を判断することが出来るというべきである。
したがって、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となりというべきである。
これと異なる繻子を言う大法廷昭和35年10月19日判決その他の当裁判所の判例は、いずれも変更すべきである。
判平成20年(行ヒ)第417号出席停止処分取消等請求事件令和2年11月25日大法廷の判決旨より引用
まとめ
このように、『出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきものの、裁判所は、常にその適否を判断することが出来る』としています。
常にとしています。常にと強い言い回しなので、行政書士試験の場合は穴埋め問題に出題される可能性があります。
今までは、司法審査の及ばないものとされてきました。
判例変更の論理展開について
では、どのような理由でこのような結論となったのでしょうか?
このことについては、宇賀克也裁判官の補足意見で述べられています。
簡単に言うと、次のような理由となります。
法律上の争訟についての確認
『法律上の争訟』であれば、司法審査の対象となります。
法律上の争訟といえるためには、判例によると
①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否にかんする争訟であること
かつ
②法令の適用により終局的に解決することができるもの
に限られるとされています。
この訴訟の場合、地方自治法134条1項で『普通地方公共団体の議会は地方自治法並びに議会規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科すことができる』とされています。
この規定により、懲罰をかされているので、性質上法令に適用によって終局的に解決しできるものといえる、としています。
法律上の争訟の例外の認められる場合はどんな場合か
『法律上の争訟』は、憲法32条で国民に裁判を受ける権利が保障されていること、また、憲法76条1項により裁判を行うことは司法権に課された義務である。
司法権に対する外在的制約として、司法審査の対象外(例外として扱う)とするには、例外を正当化する憲法上の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。
例外(司法審査の対象外)として扱っていいのかの検討
今回の地方議員の出席停止処分は、上記司法審査の対象外となる例外的な場合にあたるといえるのか?を判断することになります。
宇賀裁判官はまず、国会と地方議会の自律性の相違について解説していきます。
国会は、憲法41条で国権の最高機関とされて自律性を憲法が尊重していることが明確であり、さらに、憲法自身が憲法55条で議員の資格争訟裁判を議院に付与していること、また、憲法51条は議員に院外での免責規定を設けていることを指摘します。
これにより、憲法上の規定が明確にされているので、国会の自律性については憲法上の根拠があるといえます
したがって、国会については、司法審査の対象外という扱いのままである考えられます。
他方で、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられていない。
したがって、憲法は国会と地方議会の自律性については、同じものと見ていないことは明らかである。
地方議会の自律性はどのように考えるのか
では、国会と地方議会の自律性を同じものと見ていないとすると、地方議会の自律性はどのように考えれば良いのか?
宇賀裁判官は、ここで地方議会の自律性の根拠は、憲法上の規定によると憲法92条の『地方自治の本旨』以外にはないといいます。
『地方自治の本旨』の核心部分は『団体自治』と『住民自治』である。
『住民自治』という目的を実現するための手段として『団体自治』があると位置づけています。
そこで、『住民自治』についてもっと掘り下げて検討する必要が出てきます(※目的と手段の関係の場合は重要なのは目的の方だからです)。
<参考>
住民自治:その地域の住民がその地域の政治・政策決定に参加する
団体自治:国から独立した、地方議会などの団体により地方自治をしていくこと
住民自治についての考察
『住民自治』はどのように行うことになっているのか?
日本では、住民自治といっても、直接民主性を採用していません。
地方公共団体でも間接民主制を基本としています(もっとも、条例の制定又は改廃を求める直接請求制度等があり、国以上に直接民主制的な要素が導入されている)。
間接民主制を取る以上、『選挙⇒議員を選出⇒議員が議会に出席し意見を言い表決を行う』ということは、議員にとっての権利であると同時に、『住民自治』の実現にとって必要不可欠である。
だからなに?って思いますよね。
司法権に対する外在的制約として、憲法上の根拠として『住民自治』の尊重が求められている、だから議会の決定は司法審査の対象外とする。
このような理由で、司法審査の対象外とすると
『住民自治』の実現に必要不可欠な議員の活動を司法審査の対象外とすることになり、今度は『住民自治』を阻害する結果を招くことになる。
これは、背理になるで、
『住民自治』を理由とする司法審査の対象外とする根拠づけはできない、としています。
また
司法審査の対象としても、何を審査の対象とするかについては、濫用的な懲罰になっていないかを判断するもので、これは過度に地方議会の自律性を阻害することにはならない、としています。
考察
この判例では、国会と地方議会の自律性の違いが明確にされたので、行政書士試験に出題されるとすると、国会と地方議会では自律性は同レベルで認められるかどうかを問うものになると考えられます。
また、上にも書きましたが、『常に司法審査の対象となる』としていますので、常にの部分が狙われると考えられます。
今回はこれで終わります。