行政書士試験 憲法判例解説 第1回 薬局開設距離制限事件 ポイント

憲法

行政書士試験 憲法解説 第1回 薬局開設距離制限事件のポイント

行政書士の試験対策で憲法判例の薬局開設距離制限事件の勉強をしたんだけどイマイチよくわからないのよね。

結論としては、憲法22条1項に反するから無効ということね。

それだけ知ってれば十分なんじゃねぇか?

しらんけど

こんにちは、ヒグマ館長です。

今回は、行政書士の憲法判例の解説第1回目として薬局開設距離制限事件(最大判昭50.4.30)について取り上げてみたいと思います。

この判例は、有名な判例なので今更かという感じもするかもしれませんが、行政書士試験においても重要な判例の一つなので取り上げていきたいと思います。

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事案

薬局を開設しようと知事に許可申請をしたら、薬局開設の距離制限に抵触するので、その場所で薬局を開設することは許可できないと開設許可の不許可処分を受けたものが、不許可処分の取り消しを求めた事件です。

判旨

薬局の開設等の許可基準の一つとして地域的制限を定めた薬事法六条二項、四項(これらを準用する同法二六条二項)は、不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないから、憲法二二条一項に違反し、無効である。

昭和43(行ツ)120、行政処分取消請求、昭和50年4月30日最高裁判所大法廷より引用

まとめ

この判決は、数少ない法令違憲判決を出した判例です。

ちなみに、法令違憲判決が出ているのは10個しかありません。

① 尊属殺重罰規定事件
② 薬局開設距離制限事件
③ 議員定数不均衡事件(昭和51年)
④ 議員定数不均衡事件(昭和60年)
⑤ 森林法共有分割制限事件
⑥ 郵便法免責規定事件
⑦ 在外邦人選挙権制限事件
⑧ 非嫡出子国籍取得制限事件
⑨ 非嫡出子法定相続分規定事件
⑩ 女子再婚禁止期間事件

そのうちの1つなので非常に重要と言えるでしょう。

『法令違憲』と『適用違憲』の判例があるので注意してください。

簡単に言うと、『法令違憲』は、法令そのものが違憲と判断されるもので、『適用違憲』は、その事案にその法律を適用するのは違憲ですというものです。

とりあえずは、法令違憲判決は10個あると覚えておいてください。

今回取り上げた、薬局開設距離制限事件は、憲法22条1項に反し違憲であるとしています、また、判旨の中でも、直接『営業の自由』という言葉は用いられていないのでご注意ください。

職業の自由と営業の自由の違い

『職業の自由』と『営業の自由』は、見てのとおり言葉が違います。

文字が違うというのもありますが、両者は存在の次元(概念のレベル)が違うのです(判例100選参照)。

区別して使えるようにしましょう。

職業の自由は、事業者と労働者の双方が含まれる人間一般の自由です。

営業の自由は、事業者のみを念頭に置くものです。

細かな違いですが、概念のレベルが違うものは、用語補充問題などで違いを知っておくと用語の選別ができるようになると思います。
※もっとも、あまり区別なく用いられている場合もあるので、行政書士試験ではあまり気にしすぎない方が良いとも思います。

憲法22条1項の職業選択の自由は何を規定しているのか?

憲法22条1項は、文言だけをみると『職業選択の自由』のみしか規定していません(もちろん居住、移転の自由も規定していますが、職業選択の自由の部分のはなしです)。

この判例は、この規定は、職業選択の自由のみではなく職業活動の自由の保障も包含するとしています。

ということで、判例によると『憲法22条1項は、職業選択の自由のみならず職業活動の自由も保障している』ということになります。

小売市場事件(最大判昭4747.11.22)では、憲法22条1項が職業選択の自由を保障するという中には、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含すると解すべきとしています。

そして、営業の自由は狭義では、開業、営業の維持・存続、廃業の自由を内容とするとされているようです。また、広義では、現に営業活動をしている者が、任意にその営業活動を行い得る自由を意味するとされているようです(判例100選参照)。

薬局開設距離制限事件では、次のように判旨に書かれています。

職業は、ひとりその選択、すなわち職業の開始、継続、廃止において自由であるばかりでなく、選択した職業の遂行自体、すなわちその職業活動の内容、態様においても、原則として自由であることが要請されるのであり、したがつて、右規定は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきである。

昭和43(行ツ)120、行政処分取消請求、昭和50年4月30日最高裁判所大法廷より引用

そうすると職業選択の自由は狭義の営業の自由と同じ意味で、職業活動の自由(職業活動の内容、態様の自由)まで含むと広義の意味の営業の自由ということを指しているといえそうです。

先ほど、薬局開設距離制限事件では、営業の自由の言葉が使われていないといったのは、営業の自由という言葉自体は出ていないのですが、意味を考えると営業の自由のことを言っているともいえるので、その辺は学者の解説を読んでください。

いろいろと見解があるので、断定的な判断はしかねます(都合ようく利用しさせてもらいましょう)。

とはいえ、薬局開設距離制限事件では、営業の自由という言葉は使われていません。

距離制限は何でもダメなのか?

距離制限によって、職業選択の自由を規制することはすべてダメなのか?というとそうではありません。

現に『小売市場事件』や『公衆浴場距離制限事件』では、憲法22条1項に反しないという判決が出ています

簡単にいうと、『規制の目的がどんなものかによって、その手段である距離制限による規制が憲法に反しないかどうかを判断する』と判例はしています。

この部分の判断をどうするかによって判決に違いが出てきます。

単に、判例の結論だけを覚える問だけでは、こっちではよかったのに、あっちではだめだったというような理解になってくるので、法律の規制目的に着目て区別すると暗記にたよらない学習ができると思います。

ちなみに、小売市場事件では、経済的基盤の弱い小売商の事業活動の機会を適正に確保し、かつ、小売商の正常な秩序を阻害する要因を除去する必要があるとの判断のもとに中小企業の保護政策の目的で、その手段として距離制限を付けたとされています。

また、公衆浴場の適正配置規制事件では、国民の健康や環境衛生の目的で、その手段として公衆浴場を適正に配置するために距離制限をおいたものです。

薬局開設距離制限事件では簡単にいうと、不良薬品の供給を防止する目的で、その手段として薬局開設の距離制限を設けたものです。

競争の激化から不良薬品の提供という因果関係が確実な根拠に基づく判断とは認められないこと、薬の流通機構の欠陥からくる経済上の弊害は別途検討されるべきこと、などを挙げて距離制限は過度の規制であるとしています。

距離制限は、事案によって合憲であるか違憲であるか分れるのできちんと押さえておきましょう。

覚え方としては、駅前などには薬局が数軒密集しているたりするので、距離制限はないんじゃないかと考えられます。そこから、現在は距離制限がないとなり、その理由はこの判決が原因であるということを思い出すといいと思います。

判例は、現在の社会状況を作っているので、結構身近に感じられると勉強も楽しくなるかもしれません。

今日はこのへんで終わります。

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